こんにちは、ウミの森山です。 先日、2023年1月21日に開催された DrupalCamp DEN 2023 Iwakuni に参加してきましたので、その参加レポートを投稿したいと思います。

DrupalCamp DEN とは?

日本で行われている最大規模のDrupal勉強会&交流会です。毎回異なる開催場所で開催されており、今回は山口県岩国市の「岩国市民文化会館」で開催されました。コロナ禍の影響により昨年度はオンラインのみでの開催でしたが、今回は現地とオンラインのハイブリッド開催となりました。弊社からは大野・菊池・森山の3名が現地参加、その他メンバーはオンラインで参加しました。

DrupalCamp DEN 2023 Iwakuni

セッション

現地開催のトラックA、トラックB、そして、オンライン開催のトラックCの3会場で計19セッションが行われました。あくまで一部にはなってしまいますが、今回私が参加したセッションの概要と感想を簡単にご紹介します。 後日公開されたセッションは下記でも見られるようなので、見逃した方はぜひ!私も見たいセッションが重なっていたので、後日でも拝聴できるのは非常にありがたいです。

» セッション一覧

ちなみに今回のセッションは、登壇者が予め録画した動画を上映、質疑応答は会場で案内された質問用QRコードを各自で読み取って投稿したものを、登壇者の方がその場で確認し回答するという方法が採用されていました。こういったコロナ対策への配慮をあちこちで感じ、主催の皆様には本当に頭が下がる思いでした。

特別セッション「Rebirth of OIST 10 years old website with Drupal 9(OISTで10年間運用されていたサイトがDrupal 9でリニューアル)」

沖縄科学技術大学院大学の Chris Wu 氏のセッションです。

プロジェクトを成功に導く鍵として挙げられていた「チームと上司に進捗を報告すること」や「適切なツールの利用」などはなるほどと頷く内容ばかりでした。また様々な国のユーザーが利用するサイトならではのお話として、日付表示や検索の仕組みを工夫されたお話なども、非常に具体的で参考になりました。 最後の方におっしゃっていた「神は細部に宿る」というキーワードはデザイン業界でもよく耳にする言葉なので、これも非常に印象に残っています。改めて今後も大切にしていきたい心得です。

» Rebirth of OIST 10 years old website with Drupal 9(OISTで10年間運用されていたサイトがDrupal 9でリニューアル) 日本語字幕あり

Rebirth of OIST 10 years old website with Drupal 9(OISTで10年間運用されていたサイトがDrupal 9でリニューアル)

国際農研Webサイトの構築と運用

国立研究開発法人 国際農林水産業研究センターの林 賢紀氏のセッションです。

プロジェクトを進めた上での工夫などを具体的な対応例などを元に、ご紹介いただきました。 利用者からも「項目に従って入力するだけでキレイなWebページが作れるようになった」など喜びの声があったそうで、Drupal推しの弊社としても嬉しく感じました。特に「小さく産んで大きく育てる」というお話に非常に共感です。継続的改善に適したDrupalの特性を上手く活用されていることが伝わってきました。

マスコットキャラクターの ねっけんくん にも興味が湧きました。会ったら手を振りたいと思います(笑)

» 国際農研Webサイトの構築と運用

国際農研Webサイトの構築と運用

国際学会サイトの事例紹介

合同会社ユビキタスライフスタイル研究所の萩原 高行氏のセッションです。

2022年11月開催の国際学会The 19th International Conference on Retinal ProteinsのDrupalサイト構築事例を紹介いただきました。

実際の管理画面を触りながらの、事例紹介はとても分かりやすかったです。セッションの20分枠では紹介しきれないということで、より詳しく見たい方のためにロング版もご用意いただいているようですので、ご興味がある方は下記資料内のリンクからご覧になってみてください。

コロナの影響で Drupal バージョンの調整に苦労されたという開発会社としてはわかりみの深いお話もありつつ、決済フローで困った点など今後のプロジェクトの参考にさせていただきたい内容もたくさん紹介いただいたセッションでした。

» 国際学会サイトの事例紹介

W3CSSテーマを利用したシンプルなディストリビューション SQbase

株式会社シナジークエストの白根 健司氏のセッションです。

サイト構築の効率化とトレーニング題材としての利用を目的に作られた SQbase の内容とインストールのデモ、および教材をご紹介いただきました。

SQbase はシンプルなサイト構成と日本語のサンプルコンテンツを組み込んだディストリビューションで、W3.CSSフレームワークによるレスポンシブ対応サイトの構築例を提供してくれます。

W3.CSS フレームワークの具体的なクラス例なども参考に詳しくご紹介いただきました。 実際に使ってみることで、テーマ開発の負荷軽減、共通のサイト構成を再利用できることにより案件固有の設定作業に集中できるなどのメリットがあるそうです。オープンソースで公開されており、どなたでも利用できるようなので興味がある方は下記よりデモ動画をご覧いただくと良いかもしれません。

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W3CSSテーマを利用したシンプルなディストリビューション SQbase

エンジニア向けノードのアクセス制限方法まとめ

弊社スタジオ・ウミのエンジニア、新田 幸子のセッションです。

デフォルトの状態で行えるアクセス制限、コントリビュートモジュールでノードのアクセス制限を行う方法、カスタムモジュールでノードのアクセス制限を行う方法など、ノードに対するきめ細かいアクセス制限を行うために使える様々な方法を紹介してくれました。

新田は前々回の DrupalCamp DEN 2019 Nagoya でも「Drupalの日本語検索」というテーマでセッションを行い、最も良かったセッションとして好評を博しておりましたが、今回も、日々 Drupal を扱い熟知している彼女だからこそできる専門性の高いセッションでした。

詳しくはここでは語りませんが、このセッションをご覧いただいていない方は(資料ではなく)必ず動画で見てくださいね。セッション後の懇親会でも、たくさんの方からその深い内容とアプローチの双方を絶賛いただいたセッションです。

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エンジニア向けノードのアクセス制限方法まとめ

Drupal × Tailwind CSS

続けて、弊社スタジオ・ウミのエンジニア、スタジオ・ウミ 中井 俊貴のセッションです。

高度なカスタマイズが可能なユーティリティファーストのCSSフレームワークとして近年話題の「Tailwind CSS」を使ったDrupalサイト開発のお話です。社内案件での利用経験をふまえ、Tailwind CSS とはなにかといった基本的なところから、実際の開発環境や実際に起きた問題と気をつけるべき点など、そこで得た知見について実際のコードを見ながら詳しく共有してくれました。

結果的に Drupal × Tailwind CSS が最適解という訳ではないのですが、そこに至るまでの推察や利用シーンに応じた使い分けなどの話はCSSフレームワークを使ったDrupal開発に興味をお持ちの方には参考になったのではないかと思います。現地会場でも深く頷きながら聞いておられる方がたくさんいらっしゃいました。

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Drupal × Tailwind CSS

Drupal Initiativesから読み取る Drupal 10以降の未来

最後は、イッセイ株式会社の直江 健介氏のセッションです。

過去〜現在までの Drupal Initiatives(※) が果たしている役割・現状を把握したうえでの今後の Drupal が向かう方向性についての考察を発表されました。これまで開催されてきた DrupalCon での発表内容や変遷を振り返りつつ、直近数年の状況を見てきた直江様の予想として、下記の4つを挙げられていました。

  • コミュニティ貢献活動の促進
  • Composableアーキテクチャのドライバーとして
  • Decoupled/JSの目玉として
  • より良いSite Building体験

DrupalCon に現地参加され、長くDrupalに携わられている直江様ならではの説得力のある発表内容でしたので、より詳しく知りたい方はぜひ公開されている動画をご覧になって見てください。

個人的には「より良いSite Building体験」の一環として紹介されていた管理テーマ「Gin」に興味が沸きました。Drupal 9.4.0からデフォルトの管理テーマとして正式採用されている「Claro」をベーステーマにしているそうですが、デフォルトでダークテーマを持っていたり、管理メニューにバーティカルバーを採用していたり、UIデザイン的にもトレンドを取り入れたテーマのようです。

セッション最後の質問コーナーで情報収集の方法について尋ねられた際に「人、コミュニティがやっぱり重要!」とおっしゃっていたのも印象的でした。 また Talking Drupal という Podcast を常に聞いて情報収集をされているそうで、とても勉強になるとおっしゃっていました。英語が得意な方は聴いていただくと面白そうです!

※ Drupal Initiatives とは、Driesらが掲げるDrupalの設計・開発指針を具現化するために有志のメンバーで組織されたタスクチーム

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Drupal Initiativesから読み取る Drupal 10以降の未来

地域との連携

今回の開催はこれまでと少し異なり、地域と密に連携されていたことも印象的でした。

イベント冒頭で岩国市長 福田様からのご挨拶があったり、受付で地元の高校生たちがボランティアとして一生懸命対応をしてくれていたり、日頃から積極的に地域貢献されているメタ・インフォさんが主催されたからこその会場の雰囲気を感じました。

またホールには山口県の特産品ブースが設置されており(主に酒好きの皆さんの)目をひいておりました! 並べられた日本酒は全て岩国市に酒蔵がある日本酒ばかり。左端の「雁木」はいただいたことがありますが、フレッシュでめちゃくちゃ美味しいお酒です。左から2つ目の「五橋」はセッション後の交流会で熱燗をいただきましたが、これまた非常に美味しく、思い出のお酒となりました。中央のお酒「金冠黒松 大吟醸錦」はまるで Druplicon のような形・・!不思議なご縁を感じます。右から2つ目の「金雀」は、ブースの案内をしてくださった県庁の方もおっしゃっていましたが、人気すぎて買えない幻のお酒。買って帰りたかったのですが、やはりどこも品切れでした(涙)。そして右端の全国的にも非常に有名な「獺祭」は、私を日本酒沼に引きずり込んだお酒の一つです。熱が入りすぎて全てにコメントしてしまいました。すみません。

山口県の特産品ブース

最後に

最後までお読みいただきありがとうございます。

久しぶりのオフライン開催となった今回の DrupalCamp DEN 。長らくお会いできていなかった方々ともお話ができ、また開催地である山口県の皆様との出会いもあり、さらには場所をホテルに変えての交流会・宿泊(そして温泉..)と、いつもとは一味も二味も違った楽しさがありました。

セッションを事前収録し現地でパブリックビューイングを行いつつ、同時にオンラインでもYouTube放送を実施する・・という今回の新しい試みは、相当のご苦労があったと伺いました。

有意義な1日を過ごすことができたのは、今回の開催にあたり尽力してくださった実行委員の皆様のおかげと感謝しております。関係者の皆様、本当にお疲れ様でした。そして良い時間をありがとうございました!


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